室生深野の古桜

2023年4月4日撮影
宇陀市室生深野の里は奈良県と三重県の県境にあり、名張の町を見下ろす集落と棚田が美しい里で「にほんの里100選」や「ユネスコ未来遺産」にも選ばれています。以前深野の山桜と池を撮影した写真を室生在住の写真家に見せていただいたことを思い出しその場所を訪ねてきました。

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桜をさがして深野を歩いていると、親切なおじさんが「昔あのへんに桜があったよ」と教えくれて、集落の坂道を上がっていきます。坂道を登りきったところに古い池があり、その堤に大きな山桜が咲いていました。

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桜はちょうど最盛期で枝いっぱいに花をつけています。昔は沢山の水が蓄えられていたのでしょうか。いまは水が少なくなって水面が水草で覆われています。

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今日は太陽が雲に隠れて風も強くなり冬に舞い戻ったような天候です。

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池には清水が流れ込んでいて、小さな流れを作っていました。水面には赤い椿が落ちていて、その周りで桜の花筏が見られした。

落椿を撮り終わってカメラを片付けたら、むこうから女性がこちらに歩いてきました。手元の竹編みの箕にはなにか青い農作物が入っています。
「以前はこの桜はもっと大きかったんやけど台風で折れて池の中に落ちてしもてん」「池はもうじき、みんなで掃除するとおもうねん」
女性は、桜を撮りに来た私にこの桜がどんなにきれいだったか説明をしてくれながら箕で持ってきた野菜を洗い始めました。箕の中には、いま畑から収穫してきたと思われる泥付きの分葱が入っています。
手際よく泥を洗い落としながら、キレイになった分葱を揃えていきます。薄暗い池に揃えられた真っ白な分葱、池には赤い落椿と椿の周りには桜の花筏。なんと美しい光景だと見とれていて、慌ててカメラを出したのですが彼女の野菜の泥落としは終わってもと来た道へ踵を返して去ってしまいました。